世界的声楽家は参考になりません

 おはようございます。

 

 今回の記事は先月の「上手くなる魔法の薬はありません」の続きです。

 

 世の中には声楽マニアの方もいらっしゃって、そういう方は数多くの世界的名歌手の歌を聴き込んでいらっしゃると思います。それに関し注意して頂きたい点があります。

 

 それは、単純に鑑賞する分にはいいですが、お手本として技術を分析し、真似る対象にはしない方がいいということです。

 

 これは二つの点で害があるからです。

 

 まず一つは、お手本にするにはあまりにも技術に差があり、無理があるという点です。世界的歌手は、歌い手が登らなければならない階段を、百段も千段も登った人達です。彼ら彼女らは一朝一夕にその高みに達した訳ではなく、練習を積み重ね、努力して目の前の壁を一つ一つ乗り越えて来たからこそ、今のその位置にいられる訳です。

 

 そういう人の技術を、CDや動画で聴いたぐらいで身に着けることは不可能です。次元が違い過ぎるからです。少年野球チームに入りたての小学生が、イチロー選手やダルビッシュ投手の真似をしても、うまくいきそうにないという気がしませんか?体自体が全然違うので、色々と故障してしまうのが落ちでしょう。歌でもそれは同じです。

 

 二つ目は、トップレベルの人をお手本にすることで、日々の基礎的な練習が馬鹿らしく感じられてしまう恐れがあるという点です。上を見過ぎるとどうしても、「こんなことやったところでどうにもならない」と思ってしまうのが人間の心理です。資産百兆円を目指すと、まともに普通の労働などしていられないという気持ちになるのと同じです。

 

 芸事の世界では、ヘリコプターで一気に山頂に登るようなことはできませんから、気長に、辛抱強く練習していきましょう。どこかの天才のことは放っておいて、変に上を見過ぎず、今の自分にできることをただ積み重ねていきましょう。それこそが上達への道です。