第一印象が最悪の音楽に出会ったなら

 こんにちは。雨が多いですね。


 誰でも嫌だなと思う曲に出会うことがあるのではないでしょうか。テレビやラジオから流れてくる曲、街中でかかっている曲、CDに収録されている曲等、色々な場面で嫌な曲に出会うことがあると思います。ときには怒りさえ覚えるほど嫌だと思う曲に出会うこともあるでしょう。


 音楽は無理矢理聴くものではないので、それほど嫌ならもう聴かなくていいのですが、声楽やボイストレーニングを学ぶ人ならば、そこでちょっと立ち止まってみましょう。第一印象が最悪の曲は、自分の世界を広げるきっかけになる場合もあるからです。


 私の場合、第一印象が最悪だったのは、高校生のときに聴いたストラヴィンスキー作曲「春の祭典」です。当時クラシック音楽は優雅かつ甘美であるべきだと思っていたのですが、この曲は非常に荒々しく暴力的で、およそ優雅さや甘美さとはかけ離れた曲でした。聴き終えたとき、「こんな曲はクラシック音楽に対する冒瀆だ。許せない」と憤慨しました。


 しかしCDを買った以上聴かなければお金がもったいないので仕方なしに聴いていると、あるときふと、良さが感じられた瞬間がやって来ました。「この曲はこれでいいのだ。この荒々しいところが魅力なのだ」と素直に思えたのです。それ以来、優雅さや甘美さの無い曲も楽しめるようになりました。最悪の曲が私の狭い考えを崩し、音楽の世界を広げてくれたのです。


 こういうこともあるので、最悪だと思った曲はあえて何度か聴いてみましょう。結果的に好きになれなかった場合は、何故そこまで嫌いなのか考えてみましょう。徹底して嫌う曲について考えてみれば、自分はどんな曲が好きで、そもそも音楽自体をどう捉えているのかよく分かるからです。


 第一印象が最悪の曲をうまく利用して、自分の音楽の世界を深めていきましょう。勿論、一生嫌いなままでも構いません。


 写真は僕がよく聴いていた、ブーレーズ盤春の祭典のジャケットです。